健康保険の給付について ~ ② 手当金、その他給付 編 ~

医療保険の給付について ~ ② 手当金、その他給付 編 ~
2026.04.20

健康保険の給付について ~ ② 手当金、その他給付 編 ~

 前回、健康保険の給付制度のなかで、病院にかかったときなど医療費に関する給付についてご紹介しました。

 今回は、つぎの給付や制度について、内容と手続き方法を紹介します。

  • 仕事や通勤中以外に負った傷病の療養のため仕事を休んだ間の傷病手当金
  • 出産のために休んだ間の出産手当金
  • 出産にかかった費用を一部補助する出産育児一時金
  • 出産のために休んだ間の保険料を免除する産前産後休業取得
  • 育児のために休んだ間の保険料を免除する育児休業等取得
  • 亡くなったひとを埋葬したときの費用を一部補助する埋葬料

 なお、今回も、全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」といいます)での制度や手続き方法について紹介させていただきます。ほかの健康保険などに加入している方は、その保険者の案内をご確認ください。

傷病手当金について

 健康保険の被保険者(任意継続被保険者を除く)であるひとが仕事以外でけがや病気となり、いわゆる私傷病の療養のために4日以上働けなくなった場合は、働くことができなかった日について傷病手当金の支給をうけることができます。
 働くことができない状態であることを証明するため、医師(療養担当者)の診断を受ける必要があります。
 支給を開始した日から通算して1年6か月まで受給することができます。

 ただし、療養のために3日連続して休んでいること(待機)が条件となります。
 例)たとえば、2日連続で休んだが3日目に出勤したあと、4日目から3日連続で休んだときは、支給の対象になります。

傷病手当の受給要件に関する表です。

 なお、待機には、有給休暇や土日祝などの公休日も含まれます。
 出勤時間内でも、業務以外の原因で負傷したため、働くことができなかったときは、その日から待機に含むことができます。

支給額について

支給の開始日の前月から継続した12か月間の「標準報酬月額」の平均額÷30日×3分の2
※ 標準報酬月額とは、通勤手当や残業代などを含むお給料から算出した一定の基準額のことです。
※ 支給の開始日以前の期間が12か月間に満たないときは、前月までの各月の標準報酬月額の平均額か、全被保険者の平均額をもとに定められた金額のいずれか低い額を用いて計算します。

 また、休んでいる日が支給の対象になりますが、出勤してお給料が発生したものの、その額が傷病手当金の支給額より少ないときは、差額分が支給されます。

 傷病手当金の支給をうけるためには、支給の対象となる開始日の翌日から2年以内に、協会けんぽに「健康保険傷病手当金支給申請書全国健康保険協会ホームページからダウンロードできます)」を郵送もしくは電子申請しないといけません。
 傷病のために働けなかった日数などを証明するため、申請書には会社(「事業主」)と医師(「療養担当者」)の記入用紙が含まれています。

出産に関する制度について

出産手当金

 健康保険の被保険者(任意継続被保険者を除く)であるひとが出産のために会社を休んだ場合は、出産日を含める42日(多胎妊娠のときは98日)前から出産日の56日後まで、出産手当金の支給をうけることができます。
※ 出産日が、出産予定日より遅れたときは、出産予定日を含める42日前からの支給になります。

支給額について

支給の開始日の前月から継続した12か月間の「標準報酬月額」の平均額÷30日×3分の2
※ 標準報酬月額とは、通勤手当や残業代などを含むお給料から算出した一定の基準額のことです。
※ 支給の開始日以前の期間が12か月間に満たないときは、前月までの各月の標準報酬月額の平均額か、全被保険者の平均額をもとに定められた金額のいずれか低い額を用いて計算します。
※ 出産手当金の受給期間中は、傷病手当金の支給は停止になります。傷病手当金の支給額のほうが多い場合は、差額が傷病手当金から支給されます。

 また、休んでいる日が支給の対象になりますが、出勤してお給料が発生したものの、その額が出産手当金の支給額より少ないときは、差額分が支給されます。

 出産手当金の支給をうけるためには、支給の対象となる開始日の翌日から2年以内に、協会けんぽに「健康保険出産手当金支給申請書全国健康保険協会ホームページからダウンロードできます)」を郵送もしくは電子申請しないといけません。
 出産日や休んだ日などを証明するため、申請書には会社(「事業主」)と医師・助産師の記入用紙が含まれています。

出産育児一時金

 健康保険の被保険者や被扶養者であるひとが妊娠4か月(85日)以上で出産したとき、出産にかかる費用の補助として、出産育児一時金の支給をうけることができます。
※ 妊娠4か月以上の出産であれば、生産、死産、流産・人工流産、早産を問いません。
※ 帝王切開での出産は保険診療となるので、高額療養費制度の対象となります。

支給額について(令和8年4月時点)

  • 産科医療補償制度に加入している病院などで出産したとき
    50万円
  • 産科医療補償制度に加入している病院などで、在胎週数が22週未満で出産したとき
    48万8,000円
  • 産科医療補償制度に加入していない病院などで出産したとき
    48万8,000円

※ 多胎妊娠のときは、胎児の人数におうじた支給額になります。

  • 産科医療補償制度とは
    出産での医療事故により脳性まひとなってしまった子や家族への補償、再発防止のための情報提供など、産科医療の質の向上を図るために病院などが保険料を負担し加入する制度です。

 出産育児一時金の支給をうける方法として、つぎの3つの方法があります。

  • 直接支払制度を利用する
     病院などが代理で出産育児一時金の支給の申請や受け取りをすることで、出産したひとの病院などへの支払いがあらかじめ補助された額で請求されることになります。
     直接支払制度を利用するときは、病院などが代理で手続きをすることへの同意・署名が必要です。
     対象の病院などについては「厚生労働省『出産なび』」で確認することができます。
    ※ 出産費用が、出産育児一時金の支給額を下回ったときは、差額が支給されることになるため、別に申請が必要です。
  • 受取代理制度を利用する
     出産したひとが出産育児一時金の申請を行ったあと、病院などが出産育児一時金を受け取ることで、出産したひとの病院などへの支払いがあらかじめ補助された額で請求されることになります。
     出産予定日まで2か月のあいだに協会けんぽに「出産育児一時金等支給申請書(受取代理用) 」を提出します。病院などの証明欄があります。
    ※ 出産費用が、出産育児一時金の支給額を下回ったときは、差額が支給されることになるため、別に申請が必要です。
    ※ 出産予定の病院などに制度が利用できるか確認してください。
  • 自分で申請と受け取りをする
     出産費用を病院などへ全額支払いし、出産したひとが出産育児一時金の申請後、支給を受け取ります。

 直接支払制度を利用せず、出産費用を全額支払ったひとは、協会けんぽに「健康保険出産育児一時金支給申請書全国健康保険協会ホームページからダウンロードできます)」を郵送もしくは電子申請します。申請書には、子の出生を証明するため、医師・助産師もしくは市区町村の証明欄があります。なお、直接支払制度を利用していないことがわかるように領収書などのコピーを添付します。また、産科医療補償制度の対象であるときは、領収書などに明記されている必要があります。
 出産費用と出産育児一時金の差額を申請するときは、協会けんぽに「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書全国健康保険協会ホームページからダウンロードできます)」を郵送もしくは電子申請します。出産費用の領収書などのコピーを添付します。領収書などには、病院などが使用する専用請求書の内容と相違がないことや、産科医療補償制度の対象であることが明記されている必要があります。
 出産日の翌日から2年以内に申請しなければいけません。

産前産後休業取得

 健康保険の被保険者(任意継続被保険者を除く)であるひとが、出産日(出産予定日より遅くなったときは、出産予定日)を含める42日(多胎妊娠のときは98日)前から出産日の56日後まで出産のために会社を休んだ場合は、申し出によって休業が開始した月から休業が終了した日の翌日の属する月の前月分までの健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。
※ 妊娠4か月以上の出産であれば、生産、死産、流産・人工流産、早産を問いません。
※ 休業中に賃金の支払いがあったかどうかは問いません。
※ 厚生年金保険料について、将来の年金受給額には影響がありません。

 被保険者から会社に産前産後休業の申し出があれば、会社は年金機構の事務センターか年金事務所に「産前産後休業取得者申出書日本年金機構ホームページからダウンロードできます)」を郵送もしくは電子申請しないといけません。
 なお、健康保険・厚生年金保険料のうち、事業主負担分も免除になります。
 産前産後休業の期間中もしくは終了日から1か月以内に提出する必要があります。
 また、産前産後期間に変更があった(例:終了日になる前に休業を終了した)ときは、すみやかに「産前産後休業取得者変更(終了)届」を提出しなければいけません。

 産前産後休業取得者申出書の記入について、出産前に提出するか出産後に提出するかで記入部分が異なりますので、注意してください。

出産前に提出する場合の「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」の記入例です。日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20140326-01.files/0000018131zo7isNeqBi.pdf)の様式を加工して作成しました。
出産前に提出する場合の「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」の記入例です。日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20140326-01.files/0000018131zo7isNeqBi.pdf)の様式を加工して作成しました。
出産後に提出する場合の「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」の記入例です。日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20140326-01.files/0000018131zo7isNeqBi.pdf)の様式を加工して作成しました。
出産後に提出する場合の「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」の記入例です。日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20140326-01.files/0000018131zo7isNeqBi.pdf)の様式を加工して作成しました。

育児休業等取得

 健康保険の被保険者(任意継続被保険者を除く)であるひとが、育児休業や産後パパ育休のために会社を休んだときは、申し出によって休業が開始した月から休業が終了した日の翌日の属する月の前月分までの健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。
※ 休業中に賃金の支払いがあったかどうかは問いません。
※ 厚生年金保険料について、将来の年金受給額には影響がありません。
※ 役員のひとなどは、対象になりません。

 被保険者から会社に育児休業などの申し出があれば、会社は年金機構の事務センターか年金事務所に「育児休業等取得者申出書日本年金機構ホームページからダウンロードできます)」を郵送もしくは電子申請しないといけません。
 なお、健康保険・厚生年金保険料のうち、事業主負担分も免除になります。
 育児休業などの期間中もしくは終了日から1か月以内に提出する必要があります。ただし、育児休業の期間延長のたび(子の①1歳誕生日の前日まで②1歳6か月目の前日まで③2歳誕生日の前日まで④3歳誕生日の前日まで)に申し出をする必要があります。
 また、育児休業期間に変更があった(例:終了日になる前に休業を終了した)ときは、すみやかに「育休休業等取得者(延長)届」を提出しなければいけません。

  • 育児休業などが終了し、復職したときは、つぎの制度にあてはまる可能性があります。
    ① 子が3歳になるまで時短で働いたことで、将来の年金受給額の計算のもとになる標準報酬月額が下がった場合、日本年金機構の事務センターもしくは年金事務所に「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」を提出することで、子の出生前の標準報酬月額を休業中の標準報酬月額とみなして計算します。
    ② 3歳未満の子の養育のために育児休業したひとは、休業が終了した日の翌日の属する月から3か月のあいだの報酬に変動があった場合、日本年金機構の事務センターもしくは年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出することで、4か月目から標準報酬月額を変動することができます。
「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」の記入例です。日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20140403-01.html)の様式を加工して作成しました。
「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」の記入例です。日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/menjo/20140403-01.html)の様式を加工して作成しました。

埋葬料について

 健康保険の被保険者や被扶養者であるひとが亡くなり、埋葬を行ったときは、申請により最大5万円の埋葬料の支給をうけることができます。
※ 家族でないひとが埋葬を行ったときは、5万円の範囲内で、実際にかかった費用について支給されます。

 葬祭費の支給をうけるためには、死亡日の翌日(家族でないひとは、埋葬した日の翌日)から2年以内に、協会けんぽに「健康保険埋葬料(費)支給申請書全国健康保険協会ホームページからダウンロードできます)」を郵送もしくは電子申請しないといけません。
 被扶養者もしくは被保険者が申請するときは、会社による死亡の証明もしくは埋葬(火葬)許可証のコピーや死亡診断書のコピーなどが必要です。なお、被扶養者以外の家族が申請するときは、同世帯の場合は住民票謄本、別世帯の場合は生活費を負担していたことがわかる預金通帳や公共料金の領収書などのコピーが必要です。
 また、家族でないひとが申請をするときは、そのひとが埋葬にかかった費用を支払ったことがわかる領収明細書が必要です。
※ 亡くなったひとの死亡の原因が労災のため、労災の補償で葬祭給付があるときは、健康保険からの給付はありません。
※ 亡くなったひとの死亡の原因が第三者行為によるものであるときは、「第三者行為による傷病手当」をあわせて届け出ないといけません。

Information

 被保険者や被扶養者のひとが亡くなったときは、健康保険の資格喪失を届け出ないといけません。

おわりに

 前回より、健康保険の給付制度について紹介させていただきました。
 健康保険という制度について、“病気にそなえる保険”というイメージがある方もいらっしゃるかもしれませんが、出産にまつわる手当や、加入しているひとが亡くなったときの埋葬料といった、治療以外での給付もあるのです。
 制度を知らないことで、なかには、自治体で火葬費用の補助をうけた人が健康保険の埋葬料の申請を忘れてしまったりするケースも…。

もし、従業員の方から「なにを申請すればいいの?」「自分は該当するの?」など相談をうけられたら、ぜひ社会保険労務士までご相談ください!

2026.04.20