どんな助成金があるの? ~ 業務改善助成金について ~

どんな助成金があるの? ~ 業務改善助成金について ~
2026.06.27

どんな助成金があるの? ~ 業務改善助成金について ~

はじめに

 従業員が継続的に就労できるよう、企業は雇用の安定に努めなければいけません。
 雇用の安定のためには、労働条件や職場環境の改善、生産性の向上などを目標とした取組みをおこなうことが大切です。なお、従業員が仕事と家庭を両立できる環境をつくることや、業務に定着しやすいよう従業員の能力の向上のため訓練を実施することなども、従業員の離職の低下につながり、また新たな人材確保のアプローチが期待できます。
 そして、雇用の安定のための措置を実施する企業にたいしては助成金が支給されることがあります。

 それでは、どのような助成金があるのか、また、助成金の支給対象となる要件についてあわせてご紹介したいと思います。

業務改善助成金とは

 今回は、事業場内での最低賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資などを行った中小企業等にその費用の一部が助成される「業務改善助成金(中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金)」についてご紹介します。

  • 対象となる中小企業・小規模事業者(法人または事業者)とは
    ※ 医療法人、社会福祉法人、NPO法人などで、資本金の額または出資の総額がない場合は、常時使用する労働者数により判断されます。
主たる事業(日本標準産業分類)資本金の額または出資の総額常時使用する労働者の数
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5千万円以下100人以下
小売業5千万円以下50人以下
それ以外3億円以下300人以下
つぎに該当する場合は中小企業に該当しません。
① 発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している
② 発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している
③ 大企業の役員または職員が役員総数の2分の1以上を占めている
④ 発行済株式の総数または出資価格の総額を①から③に該当する者が証有している
⑤ 役員のすべてを①から③に該当する役員または職員が占めている
⑥ 確定申告済の直近3過年分の各年(事業年度)の課税所得の年平均額が15億円を超えている
※ 法定の中小企業投資育成株式会社、投資事業有限責任組合は大企業として取り扱われません。
  • 事業場内での最低賃金の引上げとは
     期間中(令和8年度については、令和8年9月1日から、地域別最低賃金の発行日の前日まで)に、時間当たりの賃金額が事業場内で最低額である雇用保険被保険者の賃金を50円以上引き上げ、引き上げ後の最低賃金額を事業場内すべての労働者の最低賃金額として就業規則などに定める必要があります。
     なお、引き上げた賃金は、原則事業実績報告書の提出日までに労働者に支払う必要があります。
    ※ 対象になる雇用保険被保険者は、雇入れ後6か月を経過しており、週の所定労働時間が20時間以上であるひとを指します。
    ※ 所定労働時間や労働日の短縮・減少をともなう賃金の引上げは認められません。
    ※ 複数回に分けての賃金の引上げは認められません。
     また、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であったこと、50円を超えている場合でも事業内最低賃金が改定後の地域別最低賃金額未満である場合に、要件に該当します。
  • 事業場内最低賃金の計算について
     地域別最低賃金と同様に最低賃金法第4条および施行規則第1条または第2条にもとづいて計算します。
    ※ 賃金とは、賃金、給料、手当などの名称を問いませんが、臨時に支払われる賃金や賞与、時間外労働などに対する割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは含みません。
     なお「時間当たりの賃金」については、①日給の場合は1日の所定労働時間で賃金額を除算した額 ②月給の場合は月の所定労働時間で賃金額を除算した額(月によって所定労働時間数が異なる場合は、1 年間における月の平均所定労働時間数で除算した額 ③歩合給の場合は、申請直近の1年間(雇入れ後1年に満たない者は最低3か月間)の合計額をその間の総実労働時間で除した額 として計算します。
     また、賃金の引き上げにともない手当の一部を減額することは可能ですが、すべての労働者に支払う賃金総額が引き上げ後の事業場内最低賃金以上にならないといけません(最低賃金法第7条による減額の特例を除く)ので注意しましょう。
  • 助成を受けるためには
     対象となる中小企業が所轄の労働局に交付申請を行い、交付決定された年度の1月31日までに生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資などの事業を行ったときは、支出した経費の一部が助成されます。
     事業の完了期限は交付決定年度の1月31日までです。
     なお、助成対象となる経費の下限は、消費税を除いた10万円となっています。
    ※ 解雇や賃金引下げなどがあった場合は不交付事由となります。
  • 助成額について
     事業場内最低賃金が1,050円未満の場合は5分の4が、1,050円以上の場合は4分の3対象となった経費にたいして助成されます(千円未満切捨て)。
     ただし、事業場内最低賃金の引上げの対象となる労働者の人数や特例事業者の適用の有無によって助成上限額がさだめられていますので注意しましょう。
申請コース区分事業場内最低賃金の引上げ額助成上限額
50円コース50円以上30万円 ~ 130万円
70円コース70円以上40万円 ~ 300万円
90円コース90円以上90万円 ~ 600万円
※ 同一の事業主が複数の事業場において申請するときは、事業主単位において年間の上限額は600万円です。
  • 特例事業者とは
     原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化などの外的要因により、申請前6か月間平均における利益率が前年度と比べ3%ポイント以上低下している事業者
    ※ 事業開始から1年を経過しておらず、前年同期との比較ができない場合は、事業開始日以降で労働者を雇ってから申請の前々月までの間の適当な月の指標で判断します。
  • 引上げの対象となる労働者の人数について
     事業場内最低賃金である労働者や、引き上げにより賃金額が追い抜かれる労働者をカウントします。なお、季節的に雇用されるひとで、4か月を超える期間を定めて雇用され、週の所定労働時間が30時間以上である労働者も対象となります。
     ただし、すでに業務改善助成金を受給した事業場において賃金引上げの対象となった労働者が別の事業場に異動したあと賃金引上げの対象となるときは、異動前の事業場における賃金引上げ後の賃金額を基準として、賃金引上げを実施する必要があります。
     なお、業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者について、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者としてカウントすることはできません。
  • 生産性向上に資する設備投資などとは
     生産性向上等に資する設備投資などの経費とは、謝金、旅費、借損料、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、経営コンサルティング経費、委託費の区分にあてはまるものです。
     なお、対象となる設備投資などについて、機械・設備の導入(POSレジシステム導入による在庫管理の短縮やリフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮など)、国家資格を有する経営コンサルティングなどによる指導(顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直しなど)、顧客情報や在庫状況・帳票管理のシステム化などがあげられます。
     機械・設備の導入について、自社製品の設備は助成の対象外となります。なお、老朽化による買い替えのみを目的とする場合は助成対象外ですが、買い替えによって以前より生産性の向上などが見込まれる場合は助成の対象となる可能性があり、すでに所有している設備などの増設についても同様であれば助成の対象となる可能性があります。
     また、機械・設備の導入にともなって助成実施年度に支払うリース料金や保守料金も、助成実施年度を含めて3年分の費用までが助成の対象となります。
     特例事業者はPC、スマホ、タブレット等の端末と周辺機器の導入も対象となりますのでチェックしましょう。
    ※ 助成対象となる設備投資などについて、ほかの補助金などを受けているときは併給調整の対象となる場合があります。
     対象となる経費について、納品や契約も交付決定後でないといけません
  • 交付申請について
     「交付申請書」「事業実施計画書」とつぎの書類をあわせて所轄の労働局に提出もしくは電子申請します。
  • 「国庫補助金所要額調書」
  • 「事業実施計画書」
  • 2者以上の助成対象経費の見積書の写し(契約予定額が 10 万円未満の場合を除く)
  • 特例事業者(物価高騰等要件)に該当する場合は「物価高騰等要件に係る事業活動の状況に関する申出書」、申出書のA欄からC欄を証する書類
  • 月次損益計算書、試算表など
  • 申請前6か月の賃金台帳の写し(賃上げ前の賃金支払額、支払状況を確認できる資料)
    ※ 申請時もしくは賃金引上げ前の時間当たりの賃金額が、引上げ後の事業場内最低賃金に満たない労働者の分のみ
  • 施行令3条1項の申請書の記載事項及び2項の書類
  • 事業完了期日がやむをえない事由によって1月31日から3月31日となる場合は理由書

 なお、申請時に明らかでない場合を除き、消費税・地方消費税にかかる仕入控除税額を減額して申請しなければいけません。

 令和8年度の申請期間は、令和8年9月1日から、地域別最低賃金の発行日の前日または同年11月30日のいずれか早い日となっています。

 申請にあたっては、事業場(日本国内)ごとの申請となります。
 なお、過去に業務助成対象金を活用した事業者も対象となりますが、同一事業所の申請は年度内1回までとなっています。 

 交付申請後、交付決定が通知されたのち、設備投資などや事業場内最低賃金の引き上げを行います。
※ 事業場内最低賃金の引上げは、申請後でも可能です。

 なお、軽微な変更を除き、助成対象経費の配分の変更や申請書の内容などを変更するときはすみやかに「計画変更申請書」を所轄の労働局に提出し、その承認を受けなければなりません。

  • 実績報告について
     事業実施計画が完了したら、事業完了日から起算して1か月を経過する日もしくは翌年度4月10日のいずれか早い日までに「事業実績報告書」「支給申請書」を労働局に提出しなければいけません。
     その後、支給決定通知がされたのち、助成金の支給が行われます。
  • 状況報告について
     賃金の引き上げ後実績報告手続きを行った日の前日もしくは、賃金の引上げから6か月を経過した日のいずれか遅い日から起算して1か月以内に所轄の労働局に「状況報告書」を提出しなければいけません。
  • 消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額の報告について
     事業の完了後、消費税及び地方消費税の申告によって助成金にかかる消費税・地方消費税に係る仕入控除税額が確定した場合(仕入控除税額が0円の場合を含む)は、すみやか(おそくとも事業完了日の属する年度の翌々年度6月30日まで)に「消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額報告書」を所轄の労働局長に提出しなければいけません。
     実績報告の段階で消費税仕入控除税額を減額して場合は、このかぎりではありません。
     なお、消費税・地方消費税にかかる仕入控除税額により、助成金の一部を返還する必要が生じる可能性があります。
Warning

業務改善助成金は申請数が多く、交付決定までに数か月かかる場合があるようです。
なお、申請期間内であっても、交付の予算に達した場合は申請が締め切られるおそれがあります。

 業務改善助成金によって取得した設備投資などを財産処分する場合は、所轄の労働局長の承認が必要になりますので注意してください。

 今回は「業務改善助成金」についてご紹介しました。
 助成金の制度内容や手続きについて複雑に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 申請してみたいけど不安・・・という事業主の方はぜひ、社会保険労務士までご相談ください。

 

2026.06.27